東京の霊園は、寺院の霊園を含めれば数百もある。しかし、3大霊園といえば、谷中霊園、青山霊園、雑司が谷霊園である。都下には多磨霊園と小平霊園があり、それを含めると5大霊園である。都内の霊園は江戸っ子や過去の人たちの墓ですでに満杯である。新参者や都会からはみ出した人たちは、都下や地方に出て行かざるを得ない。しかし都心の墓は歴史を感じさせ、歴史の散策にうってつけである。これらの大きな霊園は、塀もないし出入りが自由であるが、飲食やタバコなどは禁物であるのはいうまでもない。散策には最初に霊園の管理事務所に寄り、案内地図をもらってくると便利である。
霊園は猫の天国である。東京に住む動物といえば、雀か、烏か、ねずみか、犬か、いずれが多いだろうか?実は多いのは猫なのである。霊園は猫の天国である。墓地にはお供え物もあるし、静かで墓石の陰で暖かく、のうのうとできる場所である。夜になったら街場に出かけ、餌を漁る。
谷中霊園はかっては天王寺の境内であった。戦災にあわなかったので、谷中地区は下町情緒がいっぱいである。春は天王寺の参道の桜並木が美しい。樹木の種類も松、欅、杉、ヒノキ、槇、櫟(いちい)等いろいろあり、生垣の種類も多く,案内板の解説つきで勉強にもなる。谷中には、幸田露伴の五重塔の焼け跡もあり写真付きで解説されている。近くに徳川家の寛永寺があり、徳川慶喜や勝海舟、渋沢栄一など明治の偉大な人物の墓が目に付く。徳川慶喜は、夫婦仲良く並んであるだけでなく、第2婦人も祀られているのに好感が持てる。最近の政治家では三木武吉、鳩山一郎が居る。春彼岸には親戚の方の参拝者に出会う。
雑司が谷霊園は護国寺や鬼子母神神社も近い。最近は、風情のある都電荒川線だけでなく副都心線ができて便利になった。ここも戦災にあっていない。夏目漱石を筆頭に、島村抱月、岩野抱鳴、泉鏡花、永井荷風、森田草平、窪田空穂、サトウ・ハチロウ、小泉八雲らの文人が多い。尾上菊五郎や江戸家猫八、大川橋蔵などの芸人の墓も多い。軍人では東条英機、政治家では愛知揆一が眠る。最近は本を読まない若者も多く知らない人が多くなったかも知れぬが、自分の知っている著名人の墓に出会うと、何だこんなところに眠っていたのか、ここに地縁があったのか、と思わずにたりとする。たとえば夏目漱石は、本郷の三四郎池から始まり、神楽坂に落語を聞きに来ていたり、文具を買い求めに通っていたりした。そして、松山の坊ちゃんになったり、ロンドンまででかけたりしたが、結局ここに眠ったのか、とその足取りを感じさせるのである。
青山霊園は、乃木将軍を筆頭に、陸軍の将校などの軍人や外人の方の墓地が目立つ。横浜の外人墓地を思わせる。政治家では、吉田茂、池田勇人、犬養毅、井上準之助、大久保利通、森有礼、後藤象二郎、加藤高明、浜口雄幸、松方正義などそうそうたるものである。青山霊園は、全体に新しさもあって区画もしっかりしている。道も広い。
霊園は散歩するにはあまり気持ちよいものではない。人によっては気持ち悪がる。しかし、緑の木陰もちょっとあるし、子供たちの格好の遊び場でもある。車は来ないし安全なので、地元の子供たちは、平気で遊んでいる。
ときどき、著名人の墓参りに来る客人が居る。多くは男性の独り者が多い。たまにおばあちゃんに会う。俳句をやっていてその題材を求めてやってきたという。墓場には歴史と風情を感じるのだろうか。
地方にも立派なお墓はあるが、これだけ多くの方と会えるのは、東京だけである。
2010年5月
地域問題研究会 NAM記
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