若者や外国人が闊歩する現代の繁華街、変貌した六本木界隈を訪ねた。六本木は東京を代表する繁華街で、24時間都市である。ビジネスオフィス、店舗、ホテル、住宅、公園のある複合都市になった。新宿ほど猥雑ではなく、銀座ほど上品でもない。渋谷ほど若者の街ではなく、赤坂ほど大人の街ではない。丸の内は経済の都心、霞ヶ関は行政の都心、上野は文化の都心、六本木はビジネスと文化を兼ね備えた複合都市をめざした。
六本木にはミッドタウンや国立新美術館ができ、一時、ホリエモンなどのIT産業の花形が話題をさらった。今回は六本木の最初の発展のきっかけを作った六本木ヒルズを中心に散策した。
六本木ヒルズのできた六本木六丁目付近は、テレビ朝日と小さな飲食店・小売店・住宅が混在した雑多な町であった。旧長府毛利邸跡の池と林があった。大型の消防自動車が入れず、火災に弱い地区であった。木造密集地帯の再開発のモデル地区であった。そもそもは1986年に、テレ朝の田代喜久雄副社長が森ビルの森稔専務(当時)を「本社を立て替えるから相談に乗ってくれ」と訪ねたことから始まる。
1995年1月の阪神・淡路大震災の教訓から、災害に強い、超高層ビル化の構想があった。高層ビルは地震に強いことが阪神・淡路大震災で、見事に実証されたのである。災害を含め、高層ビル化、緑化など、都市環境の大幅改善が当初からの大きな狙いであった。
港区には外国の大使館など外国政府の出先機関が多く、外国人の居住者も多い。それにふさわしい街づくりを考えた。六本木ヒルズにある森タワーは、事務所棟が地上54階建てで、IT産業、外資系金融機関などの都市型産業が入居する。企業も外資系、海外との24時間交信が可能用に設計されている。天井高さ2.8m、配線のための二重床構造で情報化対応がしやすい。
六本木ヒルズは、上野・浅草の歓楽街とは異なり、銀座・丸ビルのビジネス街とも異なり、東京都心での職住近接を狙った。この街に「住み、働き、憩い、創造する人たち」を目指した。高層住宅棟は同じ設計で2棟建てた。1棟は地権者向け(170万円)、もう一棟は森ビルが340万円で買い上げる。地権者の400世帯と新規の550世帯が住む。
アークヒルズの開発では地権者の80%が売却・転出し、住民追い出し型開発といわれたが、六本木ヒルズでは、森ビルの森稔専務らの誠実な対応などもあり、地権者の80%が組合に残った。権利者500人にものぼる再開発であった。住民の賛同を得られれば、事業の9割は成功する。住民を説得するのに14年かかった。
六本木ヒルズの開発は、2000年2月、都が権利変換計画を認可、4月に着工し、「六六」計画がスタートした。多くの日本の市街区は、戦後の復興期に再開発のチャンスを逃し、群小木造密集市街地になってしまった。六本木も同様であったが、このヒルズ開発のときに永年の課題であった環状3号線と六本木通りの立体交差を成し遂げた。予測を超えた難問は電波障害で、東京タワー333m、高層ビル238mで数kmにわたる電波障害が起こり、その対策に約50億円近くかかったことである。
六本木ヒルズのシンボルは森タワーとその最上層の地上約230mの展望美術館・森アートミュージアムである。森タワーの住民、ビジネスマン、訪問者などの交流の象徴としてできた。キャッチフレーズは文化都市であった。2000年の開発着工当初から、ニューヨーク現代美術館(MOMA)との提携計画があった。森美術館はその企画力で、毎回30万人規模の観客を集めているという。
森専務の「住みたくなる住環境」という夢が実現したのである。都市再開発には、デベロッパーである森ビル、地権者である住民、東京都や港区の行政、国土交通省などの各関係者の努力が必要であった。東京・赤坂・六本木・虎ノ門、六本木ヒルズなどにある森ビルグループのオフィスビル群は光ファイバーケーブルを敷設して結ばれている。
実際に生活している人には大胆な再開発の絵はかけない。デベロッパーや開発コーディネーターの腕にゆだねられる。六本木ヒルズでは、森専務がその任を受けた。六本木ヒルズの開発には、多くの教訓があったのである。八ツ場ダム開発には有能なデベロッパーはいたのかが問われよう。地域開発には構想力のある有能なデベロッパーが必要なのである。
2010年4月
地域問題研究会主査 NAM記
●六本木散策コース例:
東京ミッドタウン・ヒノキ町公園→旧乃木邸→国立新美術館→六本木6→六本木ヒルズ→(鳥居坂下、総本家更科堀井、麻布十番商店街、浪花家総本店・豆源、善福寺、麻布十番)
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