アーカイブ: 4月 2009

2009/04/24

Permalink 14:59:01, 著者: NAM Email , 2 語, 204 回閲覧   Japanese (JP)
カテゴリ: 4.1 - Senior Consultant

産業と水資源

 ヨルダンの産業振興を考えるとき、ここに水さえあればと思った。中東の多くは、あたり一面、土漠であり、植物が生えていない。水さえあれば農業ができる。国も県も、川で考える。川沿いに平野ができ、水田ができ、人が住む。チグリスユーフラテス川流域に4大文明のひとつが栄えたのも水のお陰である。
 工業にも水資源は欠かせない。鉄鋼・化学産業は大量の水を使う。工業用水の多くは、冷却水や洗浄水である。いい水が大量にあるところには近代工業を担った紡績業が栄えた。現代のハイテク産業の半導体製造なども、良質で豊富な水が必要である。
 明治初年まで、湖沼や河川は、舟路としても開発・利用していた。明治29年、河川法ができ、河川には堤防ができる。利水(舟行・取水)から治水方式に変わる。工業化や人口増加で水が欲しくなったのである。また、灌漑技術などの進歩も貢献した。
 全国的に見ると、水不足に悩む県と水の豊富な県とがある。四国の香川県、愛媛県は水不足である。瀬戸内海性気候である。弘法大師が四国香川県にため池をつくり、灌漑用水の確保を図ったことは有名である。茨城県は、年間降雨量が少なく、香川県、愛媛県並みである。したがって、茨城県は、米は取れても、水稲ではなく陸稲である。畑作の野菜類が多い。茨城県は平野が多いのでダムが少ない。県の水源として重要なのが、霞ヶ浦である。霞ヶ浦に注ぐ川は50本くらいある。全国で2番目の広さを持つが、水深が4mで、貯水容量はわずか7億トンしかない。浅いため水が汚い。きれいにするにはある程度の深さが必要のようである。
 日本海側は、全体に降水量は多い。まず、豊富な水は林業を育む。木を育てる。山陰地方は、降雨量が多く、よく木が育つ。切り出した木は川を利用し運んだ。紀州の熊野川、木曽川なども木材の運搬に使われ、林業を支えた。
 島根県は、今でこそ人口過疎県であるが、本来水が豊富で、早くから産業が栄えた。朝鮮半島から製鉄技術が導入された。鉄は鍬、鋤などの農機具になる。木や石とは、生産性がはるかに違う。古代では、製鉄には、石炭ではなく、木炭で火を得た。鉄1トンに対し、木10トンが必要であった。特に出雲は早くから開けた。
 冬の雪は、春になると溶け出し、米の生育に役立つ。新潟県は、豪雪地帯で有名である。
むしろ、新潟市は出る水に悩んだ。新潟市は阿賀野川と信濃川が合流し、土を掘れば水が出た。明治になってポンプが導入されるまで、水に悩んだ。しかし、日本海側は、新潟のみならず、富山も石川県も降水量の多さで潤った。
 静岡県の場合、富士山の湧水が豊富で大昭和製紙などの製紙工業を生んだ。
「田子の浦、うち出てみれば真白にぞ、富士の湧水濁れるを見る」(NAM)
かつては田子の浦港には大量の製紙産業の「へどろ」があった。日軽金は、富士川の水によって豊富な電力を背景にアルミ精錬を行った。大井川や天竜川の流域はダムと発電所だらけである。
 全国での目的別水使用量を見てみよう。水の総需要は約900億トンである。農業用水がその2/3の約600億トンを使う。残りの1/3が、生活用水と工業用水で、合わせて約300億トンである。都市用水の水源は70%が河川水で、30%が地下水である。工業用水の多くは地下水を使う。それは利水の制約が少ないことにもよる。
 通常、水の利用状況には、下記のように流入する量と流出する量を調べ<水収支>を見る。以下は茨城県の例である。(単位:億㎥/年)
降雨(79)+流入(84) +地下水(3.2) =
地面蒸発(5.2)+森林蒸発(15)+耕地蒸発(18)+河川流出(126)+土中浸入(2)

 東京の水問題について考察する。そもそも、東京都は生活用水を自ら確保するべく、奥多摩の水を求めてあんなに細長い形状になっている。したがって、もともと東京都の主な水源は多摩川の玲瓏な水であったが、人口の増加などで今では大幅な水不足になっている。現在、多摩川への依存率は20-30%程度で、多くは利根川に頼っている。通常、生活用水や工業用水などの都市用水の利用量は、農業の1/20程度である。利根川の利用量の半分は農業用水である。
 時々東京都が水不足に悩まされるが、耕作放置や農地の宅地化などで農地が減っているにもかかわらず、農業用の水利権はそのままで、生活用水などにまわす東京都の水利権がないために、水不足が起こっているのである。農林水産省が強く、経済産業省、厚生労働省、国土交通省の利権の分捕りあいの縮図を見る。たまたま、水不足はそれほど頻度が多くないのでまだ表面化していないだけである。

2009年4月
地域問題研究会主査 NAM記

2009/04/14

Permalink 17:18:17, 著者: NAM Email , 2 語, 207 回閲覧   Japanese (JP)
カテゴリ: 4.1 - Senior Consultant

茨城県⑥地域活性化の産業基盤

本ブログで書いてきたのは、そもそも地域の活性化であった。地域の産業振興の決め手は何であろうか。今回はこの辺を考察してみたい。
1960年頃の日本の産業の中心は、戦後復興期の傾斜生産や朝鮮戦争特需を背景に、造船、鉄鋼などの重化学工業であり、瀬戸内海を中心とするものであった。その後、千葉や茨城の鹿島にも延びた。さらに東海道ベルト地帯を中心に自動車産業が躍進し、群馬、栃木などの北関東のGDPを押し上げ、昔日の4大工業地帯の地図を塗り替えた。
現在経済産業省は、中小企業の活性化や地域産業復興のために地域資源活用プログラムを推進し、地域の伝統産業にばら撒き施策を行っている。地域資源の活用を図るとしているが、筆者の考える地域資源は伝統産業ではなく以下の4点であろうと考えている。
1) 気候風土と土地柄・地理的条件
2) 物流・交通・流通状況
3) 人材・技術の蓄積状況とその基盤の有無
4) 知事や県民の発想・理念・施策
茨城県を中心に上記4つの産業基盤を見てみよう。

まず、1)茨城県の気候風土と地理的条件であるが、茨城県の産業誘致のうたい文句に集約されている。以下である。
①平野である
②自然災害が少ない。地震、噴火、雪害など。
③地価が安い。
④首都圏から近い。
⑤豊富な労働力
⑥交通網の整備
⑦工業団地も30近くある。

次に、2)茨城県の物流関係を見てみる。これは産業誘致の重要基盤である。
 茨城県は陸海空の交通ネットワークが着々と整備されつつある。
まず鉄道であるが、2000年につくばエクスプレスが開通。道路では、交通路線は全国一、平成20年度に常磐高速自動車道、北関東自動車道が東北自動車道まで全線開通、現在圏央道が建設中である。
茨城県の港は、外洋に直接面し、入出港に時間がかからない・また高速道路とのネットワークが完成しつつある。茨城県の4つの主な港湾施設の状況を以下に述べる。
①日立港:完成自動車の輸入、石炭、石油の取り扱い
②常陸那珂湊港:ガントリークレーンを持つ最新鋭の港、北関東の大規模な物流基地
 外貿航路:北米、極東ロシア、欧州、韓国・中国、東南アジア、豪州向けなど
③大洗港:北海道(苫小牧)と首都圏を結ぶフェリー基地、マリーン基地
④鹿島港:日本有数のコンビナート基地港、鉄鋼コンビナートと石油化学コンビナート

3)は、「人材・技術の蓄積とその基盤」である。
北陸の勇として、文化的中心になっている石川県を例にとると、その技術の基盤は、前田利家が庭師、加賀友禅、刀鍛冶、茶道具などに優秀な人材を京都などから招いたことである。
茨城県ではどうしたか。つくば大学の誘致とつくば研究学園都市の建設が鍵になり、官僚だけでなく民間の優秀な人材も集まり、県南の知能指数を一気に高めただけでなく、今後の産業の基軸ともなる。

4)産業進展の柱は、「知事や県民の考え方・発想」である。戦後、秋田県は八郎潟干拓などの稲作に走った。栃木県は日産の誘致が大きい。工業団地と企業誘致は、知事の意向が大きい。
茨城県は「農工両全」を旗印に日立、東海、鹿島に工業の近代化を進めた。茨城方式は、県が主体となって土地を一旦寄付させ、整備したのちに6割を戻し、4割を工業開発や都市整備に当てたのである。これなら金のばら撒きにはならない。金のばら撒きは、あぶく銭を手にした農民や庶民の疲弊を見る。

2009年4月
地域問題研究会主査 NAM記

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