昨年秋口から、100年に一度の金融危機から年末には雇用不安が大きな問題になった。各社があまりに急激に派遣切りを発表したからだ。トヨタ自動車工業、キヤノン、ソニーなど優良企業が人員削減を発表したのが大きなショックであった。昨年9月以降から表面化した金融危機の影響である。世界のGDPの約30%を占める米国の消費マインドがしぼんだ。日本の経済の大黒柱である自動車の需要が25%近く減少し、派遣工や期間従業員の削減となった。
本ブログでは、昨年から元気県の紹介をしようと栃木県、群馬県を紹介してきた。さらにもっと元気だった愛知県、静岡県、神奈川県などを予定していたが、思惑が外れた。特にトヨタ自動車への依存度の大きい愛知県の落ち込みが大きい。
日本の政治はどのような雇用対策を行っているのか。麻生内閣は、選挙に対する人気取りから、2兆円規模の定額給付金を提唱しているが、その時期は大幅にずれこみ、補正予算案を含め、迷走を続けている。そもそも定額給付金は、税金を取って再配布することであり、徴収と配布という行政の手間のみかかる。この費用は、一説によると100億から200億掛かるという。税金のばら撒きにより、経済の活性化ができるという答弁が国会でまかり通っている。税金を取っては、ばら撒くことにより、経済が活性化するというなら、2兆円などとけちなことを言わずに10兆円程度の規模にしたほうが良い。
戦後、笠信太郎の「花見酒の経済」が話題になった。熊さんと辰さんが、注(さ)しつ注されつ、酒を酌み交わすことにより、双方に売上が生じGDPが上がるという話である。これなどは経済の仕組みを考えさせられる話である。経済企画庁などが真面目に考えていた。
次の話はどう受けとめますか。泥棒が蔓延すると経済が活性化する。盗難にあったものが売れる。盗難予防のための監視装置や鍵などが売れる。警備の要員が必要となり、雇用機会が増える。経済的にはいいことばかりである。小生はこの話を聞きびっくりした。官僚の考える方策とは、これに類する話が実に多い。「つじつまが合う、論理的につながっていればいい」のである。
アイデアがなく具体性も乏しい。たとえば、雇用対策といえば「労働者の研修」がでてくる。厚生労働省のグリーンプラザの建設なども健康につながるからという筋から来ている税金の無駄遣いである。要するに単なる「ばら撒き」的な話で、全く能がない。パラサイトである。税金は、もっと有効に使うべきだと国民の多くは考えている。国会討論などでの政治家の馬鹿げた論議にうんざりしている。もっと前向きな提案を論議すべきなのである。
派遣切り対策について、就職窓口を設けたり、生活資金を援助したり、市役所での緊急雇用を行ったり、日比谷公園に派遣村ができたり、まったくお寒い話である。税金のばら撒き、すなわち「お上の恵み」思考の行政である。
食糧自給率の問題を叫びながら、手を打たない。小生は前々から農業の復活を叫んできた。そのため東北の各県を回った。農家の援助ではなく、農業の復活である。昨年の毒入り餃子や食品偽装からの食の安全問題など、農業復帰を通じた地方の再生がいま重要課題で、派遣切りや雇用喪失対策の大きな柱であると思う。
1月20日にオバマ大統領が就任した。グリーン・ニューディールを提唱している。いい話だ。日本の政治のもたもたは情けない。間接政治の弱点である。支持率20%以下でも総理大臣になれる。外圧がかかれば日本も動く。年金、医療、介護の不安のなかで、若者が金を使わない。将来の経済発展につながる公共投資に金を使うべきである。例えば、太陽光発電や電気自動などの環境産業に投資する。医療産業への投資(がん治療特効薬を開発するなど)や介護施設の建設や介護ロボットの開発もよい。羽田空港拡大などの物流インフラの整備と次世代航空機の開発、通信、インターネット網の整備など有効投資はいくらでもある。次回から、これからの農業問題について述べる
2008年1月
地域問題研究会主査 NAM記
(国情)
2009年スタートは、イスラエルとイスラム原理主義ハマスとの間で空爆、ロケット弾の応酬が行われた。パレスチナとイスラエルの紛争の根は深い。1880年ころまでは、大多数のユダヤ人はロシアとポーランドに住んでいた。帝政ロシアが南下してユダヤ人の住んでいた地域はロシア領地になった。ロシアに住んでいたユダヤ人の大半はアメリカに渡った。一方、旧約聖書で神に約束されたシオンの土地にユダヤの国をつくろうというシオニズム運動が起こり、パレスチナへのユダヤ人の移民がはじまった。第一次大戦以降約30年間、パレスチナ地区はイギリスの統治下になった。1947年に国連によりパレスチナ分割案が採択され、1948年にヨルダン川西域の肥沃な土地にイスラエルが建国され、一方アラブ人のパレスチナ国家は建国されなかった。1948年に第一次中東戦争以降、この地区の紛争は絶えない。
1970年代ころ、パレスチナゲリラ(PLO)はヨルダン領からイスラエルを攻撃したが、ヨルダンのフセイン国王は1970―71年、ゲリラ活動を禁止し、過激パレスチナ人の多くはレバノンに逃れた。ヨルダンは石油も出ず、経済力も弱く、ヨルダン国王フセインは、アメリカの援助の囁きになびき、親西洋的なヨルダンの今日をつくりあげた。1994年のヨルダンとイスラエルの和平協定以来、ヨルダンの平和が続いている。
(ヨルダンの産業)
GDPで見ると不動産業が20%近くある。石油で儲けた小金持ちが治安の安定しているヨルダンに資金を流入する。首都アンマン市内は、ビルが建ち並び活気を呈している。産業は、クェートの失敗に見るごとく、その基盤・下地は弱く、工業は得意ではない。ヨルダンの主な産業は、食肉加工、チーズ、オリーブ油、泥石鹸などの化粧品、死海の薬品、燐酸肥料、家具産業、大理石、建設業などである。リン鉱石と石油精製などが国有である。多くは、中堅企業と中小企業である。
(ヨルダンの雇用環境)
オイルマネーのおこぼれと外国からの援助に頼るヨルダンは、消費生活は発達しており、物価も日本とあまり変わらない。しかし、産業基盤の弱さから失業率は高い。特に若年層の失業率は30%近くあるという。ヨルダンの若者は、親のすねをかじっている。ヨルダン人は働かないといわれている。優秀な若者は、湾岸諸国などで働いている。
ヨルダン国内の最低賃金は110JD(2万円弱)/月くらいであるから、高くはない。しかし、多くの中堅及び大企業は良い人材を集めるために、250JD/月(約4万円)程度を支払っている。
(会議)
ビジネス環境のひとつに国民の時間概念がある。会議はそれほどルーズではない。時間は守る。また、議論は好きである。しかもロジカルである。しかし、会議で決められたことは守らない。日本人とは異なり、そのときの情勢により戦略的に是々非々に行動する。現在までの中東の政治的動きもその現れである。通産省企業局の役人、投資庁の役人、中小企業庁の役人、商工会議所の人などに会ったが、日本人には好意的に思える。人の話を良く聞く。日本から技術を学びたいのと日本からの投資を期待しているようである。
2009年1月
地域問題研究会主査 NAM記
2009年の正月のスタートはいかがでしたか。せめて新年の挨拶ぐらいは明るく元気で行きたいものである。昨年は、毒入り餃子事件から始まり、誰でもよかった殺傷事件、原油・乱高下、妊婦たらい回し、突然の政権投げ出し、派遣切りなど、激変の年であった。金融危機に始まった産業不況は、今年はより一層深刻なものになりそうだ。
本ブログでは元気地域を紹介する予定でいたが、最も元気であった愛知県や静岡県も厳しい環境にある。元気地域の紹介は改めて行うとして、昨年の続きのヨルダンの話をする。
昨年9月ラマダンの時にヨルダンに行ってきた。ヨルダンの中小企業振興策の支援である。日本では派遣切りの問題で騒がれているが、ヨルダンでは若者の失業率が30%近くもあって、中小企業を振興させて、雇用吸収力を高めようということであった。ヨルダンどころではなく、むしろ日本の雇用対策が急がれる。
さらに昨年の暮れにヨルダンの使節団が日本にやってきた。そんなに日本の企業がよいのなら、ひとつ日本のやりかたを見てみたいものだと、はるばる20時間近くをかけてやってきた。ここ日本能率協会にも産業能率の話を聞きにやってきた。大変感激して帰っていった。
ヨルダン川西域では、年末から年初に掛けてハマスとイスラエルの間で、ロケット弾と空爆のやり取りが起こっている。ヨルダンの眼と鼻の先である。ヨルダンは王国で、イスラエルとは和平協定ができて以来治安もよいという。
ヨルダンはその広さも人口もちょうど北海道と同じくらいの小国であるが、イラン、イラクなど湾岸地域の要になる可能性を持つ。イラン、イラク、イスラエルなどのどちらにも与したくない日本にとって、西洋社会と中東の橋渡しができる。ヨルダン人の90%はイスラム教徒であるが、キリスト教徒もいるし、仲良くやっている。ラマダン期間中は、従業員は2時ころ帰宅してしまうが、問題にはなっていないようである。
ヨルダンの産業について述べる。ヨルダンはその80%が砂漠である。正確に言うと砂ではなく土漠である。日本の森がヨルダンでは、土漠である。しかしヨルダン川流域には、緑があり、農業が営まれている。川の西域は紛争が耐えないが、東側は野菜畑があり、日本では耕作放置である緑の土地は、ヨルダンでは垂涎の極みの土地である。ヨルダンの食卓は意外に豊富で、豚肉は駄目のようだが、羊の肉はうまい。チーズ、乳製品など、素材を輸入した食品加工は盛んである。乾燥に強い、オリーブ、イチジク、トマトなどはヨルダンの産物である。
ヨルダンの資源は、死海、砂漠(石)、高学歴ではある。死海は塩の濃度が高いだけで
なく、多くの種類のミネラルが豊富に含まれている。泥石鹸などの化粧品、死海の薬品などはすでに産業化されている。
高学歴の人材は、高額所得が得られる湾岸地域に出稼ぎに行く。彼らの送金によるヨルダンの収入は馬鹿にできないほどである。低所得の国内のダーティワークは、フィリピン人、エジプト人、パキスタン人に任せている。
先日来たヨルダンの政府高官の話によると、ヨルダンは中小企業の振興にかかわる法律も脆弱で、中小企業金融、国による技術研究施設の充実が望まれるという。適切なる国家戦略のもとに、重点産業を決め、技術導入、試験研究機関などを設立し、金融投資ではなく産業投資を行い、より一層の産業振興を期待したい。
2009年1月
地域問題研究会主査 NAM記
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